ノコギリ名人への道!初心者でもできる使いこなしのポイント
ノコギリを使いこなすコツは、刃の選び方や姿勢にあります。刃は「横挽き刃」と「縦挽き刃」を用途に合わせて使い分け、材料はクランプでしっかり固定します。姿勢は半身に構え、力を抜いて軽く握ることで、ノコギリを真っ直ぐ引けます。切り始めは丁寧に、切り終わりは小刻みに挽くことで、ささくれを防げます。また、音や目で切り終わりのタイミングを確認し、精度良く仕上げることができます。これらのコツを守れば、ノコギリ作業がぐっと楽しくなります。
(Posted:2024.12.06)
ノコギリは、多くの人にとって「真っ直ぐきれない」「切り口がきれいに仕上がらない」という思いがよぎる道具の一つかもしれません。この記事では、ノコギリを使いこなすためのコツを、ノコギリの機能の面と、扱う人の姿勢と動作の面から紹介します。この記事を読んでノコギリへの苦手意識を払拭して、ノコギリと杉を使った工作を楽しみましょう。
ノコギリの刃の使い分け
ノコギリの刃には大きく分けて2種類の刃の形状があります。まずはノコギリの刃をじっくり観察してみましょう。
こちらの刃は「横挽き刃」です。小さな刃一つ一つがナイフのような形状をしています。木目と交差する向きに使用することで、木の繊維を切断し、木材をスムーズに切ることができます。
もう一つの刃は「縦挽き刃」です。こちらの刃はノミの刃先が縦に並んでいるような形状をしています。木目に対して平行な向きに使用することで、木の繊維をこそぎ取って、木材を切ることができます。
ノコギリを使う時は、必ずやりたい加工に合わせて刃の形状を選ぶようにしましょう。刃の形状のほか、大きさにも種類があり、大きい刃は切削面がある程度の仕上がりになりますが、切る時間が短くてすみます。庭の木の枝を切るような大きなノコギリなどが極端な例です。一方、細かい刃になる程、切削面がきれいに仕上がりますが、切るのに時間がかかります。かたがみ木工においては、加工する材料が柔らかい杉材なので、ある程度小さい刃の方がオススメです。サイズでいうと「八寸目」よりも小さいものを選びましょう。
材料はしっかり固定しよう
材料がしっかりと固定されていないと、ノコギリで加工している時に材料が動いてしまい、きれいに切ることができません。いくら真っ直ぐノコギリが動けせていたとしても、これでは本末転倒です。
材料をしっかり固定するには、手で材料を押さえて体重をかける、という方法もありますが、これはなかなか大変です。利き手でノコギリを動かし、反対の手で材料を固定する、左右の手の役割が違うとどちらかが疎かになってしまいがちです。
そこで、クランプという道具を使います。万力(まんりき)と聞くと馴染みがあるかもしれません。これは、固定したいものを挟み、ネジの力で締めて固定するという道具です。材料と作業台を一緒に挟んで固定することで、安定した作業が可能になります。ノコギリの扱いに慣れるまでは、この方法で材料を固定しましょう。
姿勢と力の入れ方と動かし方
ノコギリは「まっすぐに動かすことができれば、まっすぐ切れる」道具です。当たり前のことのように聞こえますが、実際にまっすぐにノコギリを動かすにはどんな姿勢を取れば良いのでしょうか。
まずは頭の位置です。
切りたい線(墨付けした線)の真正面に立って、その線がまっすぐ見える位置に頭を持ってきます。材料の上面と側面両方に墨付けをしてある場合は、その2本の線が一直線に見える位置に頭を動かしましょう。
頭の位置がずれていると、切り口が斜めになって、垂直に切り進めることができないので注意しましょう。
続いて体の位置です。
頭を正しい位置に持ってきたところでノコギリを前後に動かせば、線に沿ってまっすぐ切ることができるでしょう。しかしここで、ノコギリの柄が自分の体が当たってしまい、ノコギリの刃を全部使えていないことに気付きます。無理にノコギリ全体を使おうとすれば、体を避けるように腕を引くことになり、ノコギリが曲がった軌跡を描きながら切り進んでしまいます。
これを避けるために、体を半身に構えることで腕の動きを邪魔せずに、ノコギリをまっすぐに引くことができるようになります。この時気をつけたいのは頭の位置です。体は半身に構えつつ、頭は切りたい線がまっすぐ見える位置に保つことが重要です。
切りたい線の延長線上に、頭、肩、肘、手首、ノコギリがあることを確認します。その状態で肩を軸に振り子のようにノコギリを前後に動かせていれば姿勢はバッチリです。
ノコギリは力の抜いて使おう
ノコギリできれいに木を切るには、ノコギリを握る手の力はできるだけ抜いて、小指だけでノコギリの柄を軽く握り、他の指は沿えて構えましょう。
ノコギリで木を切る時、ノコギリの柄を力いっぱい握って使うイメージがありますが、実はそうではありません。ノコギリの柄をぐっと握るとノコギリの向きが少し動くのがわかります。その状態でまっすぐ切ろうとすると、切り進めたい方向とノコギリの向きがずれているため、切り進めるとノコギリと材料が擦れて摩擦が生じ、ノコギリを引く力が大きくなります。そうなるともっと力を込めて挽きたくなります。結果、まっすぐ切れず、切り口はガサガサに仕上がってしまいます。
材料の切り始めはノコギリがフラフラするため、画像のように親指をノコギリに添えて、軽い力で押して材料の角を崩します。角が崩れたらノコギリの角度を浅くして、軽い力でゆっくり挽き始めます。ノコギリを手前に引く時は、手先ではなく、肘や肩で引っ張るようにイメージします。
切り進めるとノコギリが木材に食い込んでいき、摩擦や抵抗が増えるためにやや重く感じてきます。
軽い力でノコギリを挽きながら、ノコ身の傾きを確認してみましょう。ノコギリで作られた溝に対して、ノコ身の傾きを並行にすることで、ノコ身と材料の間の摩擦が小さくなり、最小限の力でノコギリを引くことができます。切り始めは特に丁寧に行い、ノコギリで溝がある程度できた段階で、一番軽く挽けるノコ身の傾きを意識して切り進めます。
体はゆったり構えよう
ノコギリを使う時、切りたい線に顔を近づけてしまうと、姿勢を維持するのが難しいので、顔の位置を切りたい線から少し離して、ゆったり構えることでこの姿勢を維持することができます。
切り終わりを丁寧に
ノコギリを使って切り進んでいき、その勢いのままに切り終えてしまって、その勢いで材料がささくれのようにむしられてしまうことがあります。ノコギリを使ったことがある方ならそんな経験があると思います。
そんな失敗を避けるために「あと少しで切り終わる」そのタイミングをつかむことが大切です。切り終わりが近づいたら小刻みにノコギリで挽いて材料を切り落とすことで、おおきくむしれてしまうリスクを減らすことができます。
タイミングをつかむ方法は「目で見て確認」する方法と、「音を聞いて判断」する方法があります。前者は言うまでもなく、都度進み具合を確認して、切り終わりが近づいたら小刻みにノコギリで挽いて材料を切り落とします。
もう一つの「音を聞いて判断」する方法ですが、普段意識しないことなので難しいと感じるかもしれません。
切っている最中はやや重めの”ギコギコ”という音ですが、もう少しで切れる状態になると、音が少し軽くなり、”カリカリ”という音になります。これがもうすぐ切れる合図です。そんな小さな変化に耳をすませてみましょう。
材料がむしれてしまうリスクを気にしたくない方は、使わない材料(捨て材)の上に欲しい材料を置いてノコギリで加工してみましょう。こうすることで切り終わった材料は捨て材の上にむしれてしまうのを防いでくれます。
この切り方をしている時も、ぜひ耳を澄まして音の変化を感じてみてください。
この記事の著者
グループ モノ・モノメンバー
DIYデザイナー。1987年山形県生まれ。千葉大学工学部デザイン工学科(現デザイン学科)卒業。東京都立城南職業能力開発センター・木工技術科で家具製作を学ぶ。2013年に「使う人と一緒に考えながら、ものづくりを楽しむ」をテーマに“gyutto design”(ギュットデザイン)を設立。DIYサポート、ワークショップを通じて工作の楽しさを伝える活動を続けている。『杉でつくる家具』では作品製作・工程解説・撮影を担当。